ABAつみきの会・NOTIA

ホームセラピー前後の変化!NOTIA13年間のデータを公開!

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2021年11月につみきの会代表の藤坂先生が「NOTIA訪問セラピー対象児の発達指数の変化(2008-2021)」という題名で、それまでNOTIAでセラピーを行ってきたお子さんのデータを集約しました。実に13年、延べ368名のデータを集約した藤坂先生とスタッフさんの労力!

今日は敬意を表し、そのデータの集約記事をさらにわかりやすくまとめていこうと思います。

NPO法人つみきの会とNOTIAについて

NPO法人つみきの会

NPO法人つみきの会は2000年にスタートした、「自閉症を中心とする発達障害をもつわが子のためにABAホームセラピーに取り組む親たちの会」です。代表は藤坂龍司先生で、自閉症児の父親でもあります。本部は兵庫県明石市にあり、全国にその活動は広がっています。

藤坂代表。

つみきの会についてはこちらのまとめ記事をご覧ください。

NOTIA

つみきの会では、家庭療育に取り組む親御さんを支援するため、2008年から独自にABAセラピストを育成して会員家庭に派遣し、訪問型のABA セラピーを行なってきました。その事業を「NOTIA」(読み方:ノティア)といいます。NOTIAの事業は2011年に株式会社になり、現在もつみきの会の会員限定で訪問療育を行なっています。(2021年現在)

NOTIAに所属するセラピストは、つみきの会に入会してABAホームセラピーに取り組むご家族に、専門的な知識と高い技術を提供している…と自負しています。今回の調査は、そのNOTIAのセラピストが訪問した(している)ご家庭を対象に調査した結果です。

NOTIAの訪問家庭

NOTIAのセラピストが訪問しているご家庭は

  • NPO法人つみきの会の会員であること
  • つみきの会のテキスト(つみきBOOK,つみきプログラム)を使う
  • 親御さんもセラピーを行う

という点をお願いしています。これはNOTIAの目指すところからきています。

「NOTIAが目指すのは、自閉症をはじめとする発達障害を持つ幼い子どもたちのために、親とセラピストが対等な立場で協力し、励まし合ってABAセラピーに取り組む、という療育スタイル(親・セラピスト協同型療育モデル)です。」

NOTIAホームページより https://notia.co.jp/

とあるように、NOTIAではセラピスト任せにしない、というところを重要視しています。ほかの療育では、先生にだけ(セラピーや指導を)してもらって、家では何もしないというところもあるかもしれませんが、NOTIAでは親御さんも日ごろセラピーに取り組み、週1回ないし週2回はセラピストが家庭に訪問をして連携しながらセラピーを行うというスタイルを取っているのです。

*地方やご家庭の都合によっては週1、2回ではない場合もあります。

*基本的にNOTIAの訪問家庭は未就学児が対象ですが、例外もあります。

調査結果を読み解く前に

発達指数(DQ)と知能指数(IQ)とは

発達指数はDQ(Developmental Quotient)といい、子どもの発達の基準を数値化したものです。発達が未分化で知能のみで発達を判断できない乳幼児に対し、身体能力などを加え、総合的に発達の状態を捉えるものです。「発達検査」と呼ばれる検査を行うとDQを算出することができます。発達検査にはいくつかの種類があり、親面接式、質問紙によるもの、などさまざまです。

知能指数はIQ(Intelligent Quotient)といい、知的能力の発達の度合いを知るために使われます。知的な能力を評価する「知能検査」という検査を行い、知能水準を測ります。

幼児の場合は知能指数(IQ)よりも発達指数(DQ)のほうがよく使われます。

いずれも指数が100である状態は生活年齢相当であると捉えられます。70~79は「境界知能(ボーダーライン)」と呼ばれ、いわゆる普通学級の学業にサポートなしで参加するは難しいと考えられています。

発達検査や知能検査はそれぞれの人(子ども)の発達の状態を理解し、その後の適切な支援や指導、治療方針の決定のために行われます。これらの数値はあくまでその時の発達状態を知る物差しの一つにすぎず、数値だけにこだわることはありません

エビデンスとは?

エビデンスとは、証拠・根拠、形跡、証言などを意味する英語 (evidence) に由来する言葉で分野によって意味合いの違う言葉です。医学や保健の分野では「ある治療法が症状や病状に対し科学的に効果があることを示す根拠となる検証結果・臨床結果」を示します。つまりしっかりした論文があるかどうか、ということにも言い換えられると思います。

療育と名の付くものには様々なものがありますが、

  • この療育がやっていて意味のあるものなのか?
  • 効果があるのか?

ということを検証していくのは重要なことです。効果が実証されていないのに、感じの良いふれこみや耳障りの良い「だけ」の療育があったとしたら、それは残念なことですよね。時間もお金も労力も無駄にしてしまう結果に繋がりかねません。ABAは科学的に実証されており、「エビデンス」のある手法です。「エビデンスベース」(Evidence based)と言われたりします。「客観的に」どう変化したかということを検証していくというのはこのやり方が効果があるか・ないかということを、療育をする側も、受ける側も知ることが出来るので大変重要です。

この調査の注意点

発達指数向上の目的ではないという点

今回の調査は2008年から2021年の間のNOTIA利用児のDQ(発達指数)の変化をまとめたものです。

これらはあくまで数値をまとめたもので、つみきの会やNOTIAが発達指数の向上を目的に療育を行っているということではありません。

また、NOTIAの療育が発達検査の項目に力を入れてセラピーを行っているということもありません。

分類を表す言葉に関して

調査結果の中ではDQの区分けを行っています。DQの区分けは、重度、中度、軽度、ボーダー、正常、の5つとなっています。こちらで使われている言葉は知的な能力の程度を基準ごとに分類する際に使われている言葉であり、それ以上でもそれ以下でもないということをご承知おきください。不快感をお持ちになる方もおられるかもしれないということは十分に承知していますが、説明する際に必要な言葉であるというと考え使わせていただきました。

グラフの色について

グラフの中で使用している色ですが、それぞれの色に意味はありません。赤は危険、青は安全など信号から連想するような意味はなく、何色を使うかは、セラピーでお子さんにピアニカを教えている時に思いつきました。鍵盤ハーモニカについてくる「ドレミシール」の色の配列が「虹」の配色でわかりやすかったのです。カラフルでかわいいし、わかりやすい。早速そちらを採用することに決めました。

「NOTIA訪問セラピー対象児の発達指数の変化(2008-2021)」

今回の調査

・2008年から2021年までの全家庭の中から、

  • 2年以上訪問を継続したお子さんで
  • KIDS(乳幼児発達スケール)の初回データと2年後以降のデータが揃っている
  • 368名の
  • 初回と最終検査の変化を調査

したものです。

NOTIAの全訪問家庭は368よりも多いのですが、その中でデータが揃っている分だけ集計したのです。調査結果の全貌はこちらからご覧になることができます。以下に出てくるデータはすべてつみきの会代表藤坂龍司先生のまとめた「NOTIA訪問セラピー対象児の発達指数の変化(2008-2021)を参照しました。代表、まとめ記事書いてもいいよ、と快諾してくださってありがとうございます。

全体のDQの平均の変化

まずは全体の変化から見ていきました。

今回のまとめに必要なデータが揃っていた368名全員の初回と最終回のDQの平均値を比較しました。結果は初回平均DQ52.1→最終検査58.6となり、6.5ポイント上昇していました。

全体のDQの構成比の変化

次に368名全体のDQ値の内訳を数値で分けて、その変化を検証してみました。

対象児を重度、中度、軽度、ボーダー(境界知能)、正常の5 段階に分けて、初回と最終検査での構成比を比較してみました。

DQの区分けは

重度~34
中度35~49
軽度50~69
ボーダー70~84
正常84~

となっています。

その結果、初回に比べて、最終検査では、ボーダー正常(DQ70以上)のお子さんが14%→34%に増えていることが分かりました。

はじめ「重度」だった子どもたちの変化は?

次に初回検査で発達レベルが重度(0~34)だった子どもたち57名が、NOTIAのホームセラピーを受けた後にどう変化したのかを検証しました。

最終検査でのDQ区分を見てみると、中度~正常まで、合わせて40%が何らかの改善を示していることがわかりました。それまで「重度」の範囲だったお子さんの40パーセントが、ABAホームセラピーを行った結果発達指数が上昇したということです。平均DQは初回27→最終32に5ポイント上昇しました(p<.01)

はじめ「中度」だった子どもたちの変化は?

初回検査で発達レベルが中度(35~49)だった子どもたち116名について、最終検査でのDQ区分を見ると、重度に推移した子どもが22%いる一方で、43% が軽度~正常に推移していました。

平均DQは初回42→最終48と 6ポイント増加しました(p<.001)。発達指数が中度から重度に推移したということは、それまでできていたことが出来なくなったということではありません。お子さんは成長しているのですが、健常と呼ばれるお子さんもまた成長しています。発達指数の算出方法は、お子さんがその時点でできることを点数化し、その数字を生活年齢(お子さんの実際の年齢)で割り算し、×100をして算出するので生活年齢によっても数値も変わるのです。

初回軽度児のDQ変化(n=143)

初回軽度(50~69)だった子どもたち143名の最終検査でのDQ区分を見ると、 正常+ボーダー合わせて48%が何らかの改善を示していました。

平均DQは初回59→最終67と8ポイント 上昇していました(p<.001)。

はじめ「ボーダー」だった子どもたちの変化は?

初回ボーダーライン(70~84)だった子どもたち36名の最終検査でのDQ区分 を見ると、44%が正常域に移行していました。

平均DQは初回76→最終82に 6ポイント上昇しました。ポイント数でみると、この領域の子どもたちが一番変化が大きかったようですね。

はじめ「正常域」だった子どもたちの変化は?

初回正常域(85以上)だった子どもたち16人の最終検査でのDQ区分を見ると、 12%がボーダーへと移行していましたが、おおむね、現状を維持していました。

平均DQは初回95→最終94と ほぼ変化はありませんでした。

まとめ

つみきの会の親御さんの多くは、地域の療育機関などに通いながら、テキストを頼りに自宅でご自身でABA家庭療育に取り組んでおられます。会員全体のデータはとっていないので、今回はデータが揃っていたNOTIAを利用している子どもたちの統計のみを行いました。

結果は、全体で初回平均DQ52.1→最終検査58.6で6ポイント以上の上昇となり、 統計上、明らかな改善がある、ということを示しました。

またDQ区分別に見ても、ほとんどの区分で初回検査よりも最終検査の方が改善を示していました。 これはセラピストだけの力ではなく、毎日療育に取り組んでいる親御さんの力が大きいと考えています。

NOTIAでは、このような発達指数の調査だけでなく、数値だけではわからない変化や改善傾向、困り感の減少などを記述式のアンケートでご記入いただいていますが、その内容からもABAセラピーをやってよかった。子どもとの時間を過ごしやすくなったなどのうれしい報告をいただいています。

今回のこの結果が、現在、あるいはこれからABA家庭療育に取り組もうとされている親御さんにとってのきっかけになることを願いまとめ記事を書かせていただきました。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

参考にしたもの

『つみきBOOK【上】』藤坂龍司 (つみきの会限定書籍)

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