お子さんの「療育」、どんなことに取り組んでいますか?とお聞きすると、
うちの子は訪問型のABAセラピーだけやっています。
市の療育や病院のOT,STにも通っています。
と、皆さん様々ですよね。どんな療育が受けられるのかは、お住まいの地域によっても左右されますが、いくつかの場所に通っているという方が多いように感じます。今日は、PT,OT,STに通っている方がそのメリットを最大限に生かすには!ということでポイントをまとめました。
Contents
PT,OT,ST とは
PT(Physical Therapist 理学療法士)
OT(Occupational Therapist 作業療法士)
ST(Speech Therapist 言語聴覚士)
はいずれもリハビリテーションの専門家で国家資格を保有したセラピスト、および受けられるサービスを指します。
PT,PT,ST どんなことをするの?
PT(理学療法)
「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マツサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80038000&dataType=0&pageNo=1 「理学療法士及び作業療法士法」第2条
PTの先生は主に粗大運動「座る」「立つ」「歩く」などの関節や筋肉に関係のある運動を提供してくださる印象があります。
日本理学療法士協会のホームページに詳しく書いてありました。
個人的な印象としては、発達障害のお子さんがPTが必要だと医師に診断されるケースは多くないように思います。肢体不自由の方や、運動機能に障害のある方、高齢者、整形外科等のリハビリとしてお見掛けすることが多いように思います。
OT(作業療法)
「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80038000&dataType=0&pageNo=1 「理学療法士及び作業療法士法」第2条
OTの先生は「作業」に特化した取り組みをしてくださる印象があります。楽しい活動や遊びの中に作業に関する動きを取り入れて楽しく取り組んでくださる先生がたくさんいる印象です。微細運動だけでなく、粗大運動にも臨機応変に取り組んでくださるOTの先生は多く、ABAセラピストの私もなるほどと参考になるアプローチや活動がたくさんあります。発達障害のお子さんはOTのセラピーを受けているお子さんが多いように思います。お箸の持ち方、ハサミに使い方、工作、のりの使い方など様々な作業に関するリハビリテーションを行います。
日本作業療法士協会のホームページはこちらです。
ST(言語聴覚士)
「言語聴覚士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者をいう。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80998053&dataType=0&pageNo=1 「言語聴覚士法」第2条
STの先生は言葉のプロです。言葉や嚥下に関する訓練をします。コミュニケーションに関する課題や言葉の発声、理解に関するアセスメントや活動を提供してくださいます。こちらも発達障害のお子さんが受ける機会が多いと思います。
日本言語聴覚士協会のホームページはこちらです。
メリットを最大限に生かす
PT,OT,STのセッションの間隔をABAで補填する
PT,OT,STどのサービスを使うかは医師の判断と保護者の要望により決まります。しかし
週一回受けたいです!
現段階では月一度となります。
と言うように、日本では高頻度でPT,OT,STを受けられるということはごく稀で、ほとんどが月一回など低頻度のサービスとなっています。お住まいの自治体やお子さんのニーズなどによりますが、PT,OT,STのリハビリだけで大きな改善を見込むというのは、頻度から考えても難しいのが現状です。
ここで誤解してほしくないのは、PT,OT,STのサービスが意味がないと言っているのではなく、素晴らしいサービスでもその場で行うだけでは不十分だということです。
その、不十分な頻度を、家庭でのABAセラピーで補填していけばよいのです。
月に一度、またはそれ以下の頻度でリハビリを行う場面で、最近のお子さんの様子も聞かず、進捗状況も確認せずいきなり新しいスキルを教えるというのは大変危険。ですのでPT,OT,STの先生はなさらないでしょう。まず、アセスメントを行っているはずです。
アセスメントは宝の宝庫
PT,OT,STの先生方はさりげなく子どもにかかわりを持ちながらアセスメントをしておられます。アセスメントというのは、その子が何ができて何が出来ていないかを確認し、何を教えたらいいかを見つけ出すことです。
そして、アセスメントののち、いろいろな課題や取り組みをしておられます。このアセスメントは、PT,OT,STの先生がお子さんの状況を把握するだけでなく、親御さんにとっても現在にお子さんの状況を理解するのに役立ちます。
ABAセラピストとしてご家庭にお伺いするとPT,OT,STに行ってきました、という話をお聞きします。すると、たまにこんな会話になります。
先日STだったんですよね。いかがでしたか?
ご挨拶はできたんですが、促してもなかなか座らず…。何とか座らせて、カードの課題とその次の課題はできて~。あ、でも「キャベツ」と「リス」のカードだけわからなくて無言でした。最後にいくつか先生が質問したのが、いつものきき方と違ったのが答えられなかったんです~。年齢を聞くときに「いくつ?」と聞かれて…。(がっかり)
落ち込むことないですよ!それはむしろありがたい気づきじゃないですか!
そう、このママの感想は宝の宝庫なんです。
この場面はあくまで例ですが、この場面で何がわかるかというと
・自宅のABAセラピーの時にはすんなり座れていたが、STで座れなかった。 ・身体プロンプトをすれば座ることができた。 ・カードを見てその名前を言うのはできた。 ・わからないカードがいくつかあった。(キャベツ、リス) ・わからないカードの時に無言でいられた。(癇癪や学習態度が崩れなかった) ・質問に答える課題は概ねできた。 ・質問に答えることが聞き方が違うと出来なかった。(「何歳?」は〇、「いくつ?」は×)
などがわかります。
セラピストはスモールステップで細かく課題を網羅しているつもりですが、それでも限界はあります。ABAセラピーだけでは気が付けなかったいくつかの課題が見えてきませんか?
わかったこと | 見えてきた課題 |
・自宅のABAセラピーの時にはすんなり座れていたが、STで座れなかった。 | セラピールームでもすんなり座る練習がいる |
わからないカードがいくつかあった。 | キャベツ、リスのカードの名づけをする |
・わからないカードの時に無言でいられた。 | 今後わからないカードのときに「わかんない」と言えるように教える |
・質問に答えることが聞き方が違うと出来なかった。 | ちょっと質問を変えても答えられるように教える。「何歳?」「いくつ?」「お年は?」 |
ABAセラピーは子どもにとって学びやすく集中しやすい環境で行うため、異なった環境でのお子さんの行動をセラピスト自身がなかなか見る機会がありません。PT,OT,STに行ったからこそ見えてくるものがあります。
わからないことは遠慮せず聞く!
PT,OT,STの先生に質問をぶつけるのは決して失礼ではありません。
「こういうことが出来ないのですが、何かいい課題はありませんか?」
「これが出来ないのは、何が原因だと思われますか?」
「今の課題のポイントはなんですか?」
こんなこと聞いたら失礼かしら…と遠慮する保護者の方は多くいらっしゃいますが合言葉は
感じよく図々しく。
遠慮して、わからないままよりも、少しの勇気を振り絞って聞いてみましょう。それがより明るい未来へとつながるきっかけになるかもしれませんよ。
まとめ
PT,OT,STのメリットを最大限生かすためのポイントです。
・PT,OT,STの専門的な立場からリハビリを行ってもらう ・PT,OT,STでできたこと、できなかったことを具体的に記録 ・できなかったことを自宅のABAセラピーで取り組む ・疑問は何でもぶつけてみる!ただし感じよく図々しく。
ここまで読んでいただきありがとうございました!