強化子ってなんでしょう。ごほうびのこと?強化子とはなにか。今一度見直してみましょう。
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強化子とは?
強化子とはABA用語の一つで、「好子」とも言い、英語ではreinforcerと言います。何らかの行動の直後にその人にとって「いいこと」つまりほうびとなるような刺激があると、以後、その行動は増加します。この原理を強化といい、ほうびとなる刺激のことを「強化子」と言います。
「じゃあごほうびじゃん」
とおっしゃる方もおられるかもしれません。ちょっと整理してみましょう。
一般的にほうびとは、人をほめること。ほめたしるしに与える金銭・品物 です。
強化子は行動が増える・続いている時に、行動の後に出現している刺激(もの、こと) のことです。
ほうびが強化子であるためには、ほうびの直前の行動が、ほうびをもらった後に増加しているということが必要です。ABAセラピーでは行動を増やしたいので、お子さんの好きなものを「強化子」として用意して、お子さんに教えたいスキルを(初めは手助け付きで)してもらい、その直後に強化子を提示することで新しいスキルを教えていきます。
好子
行動の直後に出現すると
そのの将来の生起頻度を上げる
刺激、出来事、条件
行動分析学入門 杉山尚子 p5
強化子の種類
強化子には
・一次性強化子
・二次性強化子
があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
一次性強化子と二次性強化子
一次性強化子とは、生まれながらに強化子だったものを指します。
例えば、食べ物・水・ぬくもりなどが一次性強化子です。生きるためには必須な物、と考えてよいかもしれません。
一方、二次性強化子とは学習によって強化子になったものを指します。例を挙げると、トークンや誉め言葉などが当てはまります。「わからない人にはその価値がわからない」ものと言ったらいいでしょうか。ほめ言葉も、その言葉の意味が分かれば相手の行動を引き出す強化子になり得ますが、言葉の意味が分からなければ強化子にはならないでしょう。忘れがちですが、ほめられてうれしい、と言うのは学習していくうえで育っていくものですよね。
強化子の種類
ABAセラピーで、子どもの新しいスキルを引き出していく上で、強化子は必須です。ではどんな強化子を用意すればいいの?と思われるかもしれませんが、基本的には子どもが好きな物、喜ぶものであれば何でもOKです。ご褒美に食べ物を与えるなんて、まるで生き物のしつけみたい…と思われるかもしれません。もし、食べ物以外の強化子があれば、それらを使ってセラピーを行えばよいですが、お子さんによってはおもちゃも、パズルも、体遊びも好きじゃない…。唯一の強化子が食べ物だ、と言うお子さんもいます。そんなお子さんの行動を引き出すために、強化子に糸目はつけていられません。何でもいいからお子さんの興味を引くもの、目がキラン✨と光るものを探します。セラピーを続ける中でずっと食べ物を使うわけではありませんし、徐々に間引いていきます。初めは食べ物にしか興味がなくとも、セラピーの中で遊びも経験し、ほかの強化子も増やしていくので、お菓子に依存してしまうという心配もありません。
場所によっては「食べ物は使いづらい」と言うところもあると思いますが、ご家庭でセラピーを行うのであればお菓子やテレビ、動画など何でも使っていいと思います。
強化子はとっておきのものを
セラピーをうまく行かせるためには、強化子はとっておきのものを用意してください。大人だって、いつも飲んでいるコーヒーと、高くておいしいコーヒーでは感じ方が違います。
強化子の渡し方
セラピーをするうえで、お子さんに強化子を渡すときにはどんな渡し方が良いでしょうか。基本的には私たち(セラピスト)はこんなことに気を付けて渡しています。
・すばやく(一秒以内)
・笑顔で手渡す
・押しつけがましくなく
・遊びやすいように渡す (持ち替えなくても乗り物遊びができる向きで)
・興味を引くように渡す (ちょっとの工夫で興味を引くことができます)
・飽きる前に替える (セラピーは飽きとの戦い。数に限りはありますから、コロコロ変えましょう)
・提示方法を変えてみる (出し方を変えるだけで違うもののように感じるかも!)
強化子の受け取り方
お子さんに強化子を渡した後、いざ返してもらおうとすると気に入るあまり返してくれないということがあります。こんな時に強引にふんだくるのではなく、なるべく自然な形で返してもらえたらいいですよね。コツや気を付けたいことはこちらです。
・おもちゃを両手で包んで隠す
大人が優しくおもちゃを両手で隠すと、一瞬おもちゃが見えなくなるので意外と力が抜けてふっと力を抜いてくれます。その時にスマートに返してもらうといいでしょう。…これはコツがいるかな?
・引っ張って取り合わない
取り合いになるのは避けるべきでしょう。大人だって力づくで取り上げられるのは嫌ですよね。
・躊躇せずすっと回収
返してもらおう、と決めたら返してもらってください。取り上げようと手を伸ばしたら、お子さんが体をひねっておもちゃをもって遠くの方にやってしまい取り上げられず、一旦あきらめ手を伸ばして取ろう、取ろうとして…と取る取らないの寸劇が始まってしまうのはNGです。そのうち遊びになってしまいます。返してもらう、と決めたら頃合いを見計らってすっと返してもらう。これを心がけましょう。
・「かして」で渡せるようなら「貸して」で返してもらう
大人が「じゃあ、ちょうだい」や「かして」と言ったらおもちゃを返してくれるようであれば言葉でコミュニケーションを取って返してもらうのもいいですね。(実際ここまで行くのに時間がかかるのですが)
強化子がない?!
「うちの子、好きな物がなくて…」とか「長くセラピーをやっていると強化子が見つからなくなってきて…」というお話をたまに聞きます。逆に「お勉強が好きになって、強化子がいらないんです」というお声を聴くこともあります。
強化子が見つからない時には、普段何を好んで食べているか、普段何をして過ごしているかを観察し、書き出しましょう。
強化子を増やす
強化子を増やす、と言うのは何も物をたくさん買ってくるということではありません。
発達がゆっくりのお子さんは、おもちゃで遊んだり、自分で面白そうなものを見つけていくことが時に苦手で興味の幅がとても狭いということがあります。「強化子を増やす」と言うのは重要な課題の一つです。ですので、セラピーを始めて間もないお子さんにはまず遊びをたくさん経験させ、強化子を増やします。どうやって増やすの?それは例えば、プットイン遊びを教えるのであれば、プットインをして、その後にその時の強化子(例えばお菓子など)を提示して、プットインのスキルを教えていきます。遊びを教えるの?!と思わるかもしれませんが、発達がゆっくりのお子さんは、定型発達のお子さんが自然にできることが自然にはできないということが多くあります。ですので、強化子を使って、あそび行動を強化していく、つまり教えていくわけです。
出来ない⇒やらない から
出来る⇒取り組む⇒好きになる
に代わっていければ理想的ですよね。
強化子に、誉め言葉をくっつけて渡すと誉め言葉も好きになりますよ。
強化子の紹介
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まとめ
強化子についてお分かりいただけたでしょうか。新しいスキルを教える時、必要な行動をし続ける時、強化子は不可欠です。療育現場だけでなく、日常でも知らず知らずのうちに私たちの行動は強化されています。改めて考えてみてはいかがでしょう??